地域緩和ケアの指針

地域緩和ケアの指針(地域におけるホスピス緩和ケアの指針)

日本在宅ホスピス協会は、当協会の仲間および全国各地で在宅ホスピス緩和ケアを実践してきた(積み上げてきた)全国の仲間たちの経験を踏まえて、地域で共有し、実践の拠り所となる「地域におけるホスピス緩和ケアの指針」を策定しました。
この指針の位置付けは、医療・介護従事者だけでなく、地域で対象者(疾病や障がいに伴う苦しみを抱えた人)に関わる人たち全てに向けたものと考えました。したがって、高度な専門的な医療技術に関するものではなく、そのような専門職とも連携し、またコミュニティ(地域社会)の各職種、各領域とも連携しながらホスピス緩和ケアを進めていくための指針としました。
ホスピス緩和ケアは、人が最期まで自分らしく、尊厳を持って生き、そして死ぬことを支える人権運動です。
この指針は、対象者だけでなく、その家族、友人・知人、医療・介護従事者、自治体関係者などのあらゆる人に向けて、対象者に関わる人たちの様々な苦しみを和らげて、対象者が希望を持ち続けながら、いのちを全うする事を目標としたものです。

基本となる理念

1) 地域緩和ケアとはコミュニティを基盤に展開される緩和ケアです。様々な苦痛と苦悩に直面する対象者とその家族が、場所を問わず、生活・生命の質(QOL)を改善、維持することを目的とし、安心してすまいや地域社会で過ごせるよう、チームでケアを提供します。
2) 対象者が希望と尊厳を持って生から死への過程を生ききるように支援します。
3) 人が生きることを尊重し、人それぞれの死への過程に敬意を払います。死を早めることも、死を遅らせることもしません。

対象者

(1) 生命が限られている疾患を持つ人、または生命が危機に瀕している人を対象者とします。これまでのがん患者への緩和ケアの学びと経験を生かし、その他の幅広い疾患の対象者へも積極的に対応していきます。
(2) 対象者は疾患によって限定されず、がん、エイズ、フレイル、認知症、臓器不全、障がい児など、苦痛苦悩を抱えるすべての人を対象とします。

意思決定の尊重

(1) 対象者に適切な情報を伝え、治療・ケアの方針選択に関しては医療者と対象者・家族が共有することに基づき、対象者の意思決定を尊重します。
(2) 意思決定は、一人で決めない、一度に決めない、ということを原則に、家族、医療・介護職などを含め、十分な話し合いを行った上で、対象者が決定するのが望ましいと考えます。
(3) 意思決定しても、対象者・家族の気持ちも揺れ動くことを考慮し、繰り返しの話し合いを行い、いつでも変更でき、臨機応変に対応することが必要です。

チームによるケアの提供 実施基準

地域緩和ケアは以下のようなチームによって提供されます。
(1) チームの基本は、医師・歯科医師、看護師、薬剤師、リハビリテーションに関わる専門職などの医療支援チーム、およびケアマネジャー、介護職などの生活支援チーム、それに地域住民やボランティア、その他のメンバーです。対象者のすまい、施設等で緩和ケアを提供します。
(2) 医療を支えるものとして、主として地域のかかりつけ医、在宅緩和ケア専門医、訪問看護師などがメンバーとなりますが、必要に応じて、病院の医師、看護師なども参加します。
(3) そのほか必要に応じて、心理的ケア、スピリチュアルケア等の各分野の専門職などの支援を得ることができます。

チームの構成と要件

(1) 地域で質の高い、24時間週7日間対応の緩和ケアをチームで提供します。
(2) チーム内での連絡が24時間可能であり、密に連絡を取ることができる体制を作ります。
(3) ケアマネジャー、ソーシャルワーカーをはじめ、相談支援および地域の様々な資源との連携を図る機能を持つスタッフが参加します。
(4) チームによって提供される緩和ケアの質を保証するために、研修、交流、実践のふりかえりの機会などを持ちます。

提供される基本的緩和ケア

(1) 痛みをはじめとする不快な症状を緩和するのは、緩和ケアチームの基本的役割です。
(2) 身体的な症状だけではなく、心理的、社会的、スピリチュアルな苦悩を総合的に把握し、それらに対するケアを行います。
(3) 専門的緩和ケアが必要な場合にアクセスできるよう情報交換や、連携のネットワークを作ります。(専門的在宅緩和ケアチーム、拠点病院の緩和ケアチーム、緩和ケア病棟、地域緩和ケアセンターなど)
(4) 対象者と家族の希望に応じて、病状や病気の段階に応じて適切な説明を行い、不安なくすまいで生活できるよう支援します。また、穏やかな最期を迎えられるよう、適切なタイミングで看取りに関する情報提供を行います。
(5) 対象者と家族のコミュニケーションが最期まで維持され、生きる希望を持てるよう支援し、患者の意思決定が可能となるように支援します。
(6) 対象者の死別前から死別後も、家族の悲嘆に関するケアを行います。
(7) 医療・介護だけでなく、地域の資源と連携し、対象者と家族の生活を支えます。

チーム内の運営

(1) チームは理念・目的を共有し、各職種の役割を分担し、同時に情報共有を行います。チーム内では、それぞれが役割を持つと同時に、参加においては平等であることを常に意識して活動、協力します。
(2) チーム内で、定期的にかつ必要時にカンファレンスを行います。対象者の病状やケアの方法、家族のケアなどについて細やかで親身な話しあいを行います。その際必要であれば、チーム以外のメンバーも加えることも考慮します。
(3) チーム内で、地域緩和ケアに関する定期的な教育研修、他地域との相互交流、研究活動等をおこないチームのケアの質の向上に努めます。

コミュニティとの関わり

(1) 地域の社会資源を調査、発掘し、連携・協働・協調を図る手立てを持つように努めます。
(2) 地域で緩和ケアを行う診療所、事業所などのメンバー、医療介護従事者、学生やボランティア等に教育研修の場を提供します。
(3) 地域住民へ啓発活動(パンフレットや講演会、その他イベント)を積極的に行います。
(4) 地域における医療・看護・介護・福祉・行政、その他各職種を社会資源と捉え、地域での緩和ケアネットワークづくりを実践します。

チームの倫理性の確保

(1) 各職種および参加者個人が、それぞれの役割と責任を持って担い、かつ参加においては平等であることを認識して取り組みます。
(2) チームで倫理的指針を作成し、共有します。また現場でも定期的な検討をおこない、必要時に具体的な事例に関して、あるいはチームメンバーの行為に関して、倫理的検討を行います。

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