ニュースレター

第108号ニュースレター

去る10月に青森県で開かれたリハビリテーション関係の各種研究会の合同研究大会に招かれ、「ケアする心とケアされる心」という講演をしました。その中で、末期がんの患者さんでもリハビリのケアが大きな意味を持つことがあると、事例を紹介して話しました。

それは『作業療法』04年8月号で知り感銘を受けた事例でした。

関西地方のある市で、50代の美容師Aさんが腹膜にまでがんが転移した身で在宅療養していました。Aさんは立ち上がることもできませんでしたが、医師はAさんの「仕事復帰」の希望を持続させてあげようと、作業療法士を派遣。リハビリ訓練によって、3週目にひとりで洗面、トイレに行けるようになり、5週目には作業療法士に対し、「あんたらもきれいにしとかな」と言って、顔剃りをしてやるほどになったのです。嫁さんたちは、「すごいなあ、やっぱりお母さんやなあ」とほめてはしゃぎました。

Aさんはその後、再び立てなくなり旅立ちましたが、後に作業療法士はAさんが剃刀やハサミを使えた時間を「希望の時間」という言葉でとらえました。

リハビリは生活機能のQOL向上以上のものをもたらすのですね。人が生き抜くのを支えるものは何か、示唆に富むエピソードだと思います。

在宅ホスピス協会顧問 柳田邦男(作家)

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