ニュースレター

第137号ニュースレター

HHA事務局からのお知らせ

新役員のお知らせです。3人のメンバーに加わっていただくことになりました。

<医師>  ひまわり在宅クリニック         後藤慶次さん(熊本県)
国立がん研究センター東病院 緩和医療科 木下寛也さん(千葉県)
<薬剤師> フロンティアファーマシー        前田桂吾さん(東京都)

これからどうぞよろしくお願い致します。


「HHA・多摩緩和ケアネットワーク合同セミナー」のご報告

立川市で在宅緩和ケア専門の診療所「立川在宅ケアクリニック」を開業しています。
2012年8月25日(土)に立川市で第1回「多摩緩和ケアネットワーク」を開催しましたのでご報告いたします。第1回は「在宅緩和ケアの医療・看護・薬局からの現状報告と問題点」というテーマで「日本在宅ホスピス協会」との共催で開催いたしました。

2000年2月に開業以来2012年9月末までに癌の患者さんを中心に1900人を超える患者さんを看取ってきました。訪問診療地域は立川市を中心とした14市町、人口は約100万人、実際訪問している近隣の市を含めると人口約200万人になります。現在医師5人(常勤3人、非常勤2人)、自院の訪問看護2人、他は地域の訪問看護STで100人前後の患者さんを見守っています。開業以来地域の多職種連携の「多摩在宅ケアネットワーク」、地域の緩和ケア教育のための1年間12講座からなる「多摩緩和ケア実践塾」、地域住民向けの月1回、第3水曜日、1年間継続の講演会「三水講演会」、在宅ケアの情報をお伝えするホームページ「在宅ケア.com」、ゲストをお呼びしての市民講演会などを数多く開催してきました。

長年気になってきたのは緩和ケアに従事する医療者の顔の見えるネットワークがないということでした。私の訪問診療地域には緩和ケア病棟はありません(こんなに広いのに)。開業当初は近隣に5か所ありました、現在は8か所に増えましたが、相変わらずこの周辺にはありません。緩和ケアチームは「がん対策基本法」が施行されて以来、がん拠点病院を中心に整備され取り組む病院は増えてきました。在宅緩和ケアに取り組む診療所は「日本在宅ホスピス協会」に登録している施設が23か所、「日本ホスピス緩和ケア協会」に登録している施設が3か所です。緩和ケアに熱心な訪問看護は近隣だけで10か所以上を数えます。地域の緩和ケア普及の為、在宅緩和ケア、訪問看護、緩和ケアチーム、緩和ケア病棟が連携し患者さん家族のためのネットワークを構築しようという企画を昨年末から始めました。そしてやっと開催の運びとなった次第です。

当日は13時30分からJR立川駅南口すぐのホールで13時30分から16時30分の予定で開催しました。在宅緩和ケアの医師、緩和ケアチームの医師、看護師、薬剤師、訪問看護師、調剤薬局薬剤師、病院退院調整看護師など43名の参加がありました。(初回としては上出来かな…)

まず私が「多摩緩和ケアネットワーク立ち上げの経緯」をお話ししました。都内には熱心に取り組む会が数か所存在し、長く続いていることをご紹介し、この会をつくる思い、きっかけ、必要性、今後の展開などをご説明しました。

次も私の担当で「在宅緩和ケア診療所からの現状報告と問題点」をお話ししました。

緩和ケアの歴史、在宅医療、在宅緩和ケアの歴史にまず触れ、現在の日本の医療は①外来、通院医療②入院医療③在宅医療に大きく変わったことをお伝えしました。緩和ケア病棟数、病床数は全国で231施設4615床、東京都20施設369床、多摩8施設124床であること、がん診療連携拠点病院数は全国で397施設、東京都25施設、多摩6施設と人口400万人の地域にしては不十分な数であることをお示ししました。在宅療養支援診療所は全国で12548施設、東京都1314施設、多摩252施設であること、日本在宅ホスピス協会に登録された診療所は多摩で23施設、日本ホスピス緩和ケア協会に登録された診療所は3施設という状況の地域であり在宅緩和ケアはこれからであると強調しました。2008年9月発行で日野原重明先生、佐藤智先生の対談から始まる厚さ4㎝の全7巻からなる「明日の在宅医療」という本のご紹介をしました。続いて当院の紹介、日本の今後の状態をお話ししました。今後40年で6000万人以上の日本人が旅立ちます。その内2000万人は癌、4000万人は非癌の患者さんであること、癌患者は増加、病院のベッド数は減少、介護力は低下していく将来、癌難民ではなく看取り難民が増加していくことは明らかであることをスライドでお伝えしました。その答えは「地域で看取る」特に癌の場合緩和ケアチーム、緩和ケア病棟、在宅緩和ケア、訪問看護、調剤薬局からなる「地域癌緩和ケアチーム」が不可欠になるという結論で終わりました。

続いて訪問看護ステーション「青い空」篠原かおる所長に「訪問看護ステーションからの現状報告と問題点」をお話しいただきました。東大和市で平成20年に開業されたステーションで、現在看護師11名(常勤4名)で活動され、利用者は120名程度を看ているとのことです。このエリアでの当院の癌患者さんの多くはここと連携しています。ほとんど任せることのできるステーションです。若いころに柏木哲夫先生との接点があったことをこの講演で知りました。理念は「人間同士の信頼関係」「安心して暮らせる支援」であるとのお話でした。活動報告、年間35名~45名を看取っているとの現状報告のあと課題を挙げられました。課題1.細やかな症状コントロールが不十分 課題2.在宅療養期間が短いケースにおける支援 課題3.ステーション全体の緩和ケアのレベルアップ とのことでした。

それぞれに事例を紹介しながら対応策をご紹介いただきました。

休憩に続いて大和調剤センターの薬剤師、社長でもある野中明人先生に「緩和医療と薬局薬剤師」というテーマでお話しいただきました。東京都の薬剤師会のお仕事もされていて、数年前に日比谷公会堂での研修会で在宅緩和ケアの講演を頼まれてからのお付き合いです。その講演後先生の尽力で多摩地区での訪問、配達の薬局、麻薬を取り扱う薬局、IVHや注射薬を取り扱う薬局が増加しています。その現状をスライドでお話しいただき、薬剤師が在宅医療に参加する意義は非常に大きく、大いに活用してくださいとのお話で結ばれました。

最後に発表した3人が前に座り、ご参加の皆さんからの質問、意見交換に移りました。

質問にはすべて答えさせていただきましたが、自分達の施設での現状を会場から随分お話しいただきました。どの病院の退院調整の看護師さんも患者さん側と主治医との間に立って大変ご苦労されている様子です。訪問看護、在宅緩和ケア診療所の問題は紹介が遅く在宅で十分なケアもできないままに亡くなっていくことや予後、余命の説明が不十分で無念なままに亡くなっている現状が相変わらず多いことでした。抱えている問題は皆同じなんだということを実感しました。それは「病院医師の在宅緩和ケアに対する意識改革が必要」であるという点だけです。しかし、このような会には病院主治医が顔を出すことはほとんどないので意識改革のためには更なる作戦が必要であると痛感しました。打開策を立てていきたいと思います。以上です。

立川在宅ケアクリニック 院長 井尾和雄

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