ニュースレター

第144号ニュースレター

日本在宅ホスピス協会です。春の足音もすぐそこまで迫っています。消費税増税と診療報酬改定もすぐですね。今回の診療報酬改定では、施設系の在宅医療点数が大幅に引き下げられ各方面から様々な反応が見られています。悪徳業者の是正が目的のようですが、よい方向へ進んでくれるといいのですが…

今回は日本在宅ホスピス協会顧問の川越厚先生からの最新で非常に重要な情報提供と THP の吉田美由紀さんからのお便りです。THP認定に関しては役員 10人で認定委員会を立ち上げ、現在認定基準を検討中です。4月から施行の予定でしたが、よりよいものを作る為、少し遅れることになりそうです。また皆さんには改めて報告したいと思います。


医療行為に関する法医学的研究

医療法人(社)パリアン クリニック川越・院長 川越 厚

医政局医事科が管轄する班会議の中に、医療行為に関する法医学的研究班という小さな班会議が組織されている。班長は山本隆司東大法学部教授、3名の法律専門家、3名の医療関係者が班員として名を連ねている。医療関係者の班員は藤川謙二日本医師会常任理事、末永裕之日本病院会副会長、そして一診療所医師 である川越である。私が班員に選択された経緯は定かでないが、身軽な存在であることと現場をよく知っている人間ということで選ばれたのではないか、と勝手に解釈している。この班会議は規模こそ小さく二回の会議を持って終了となったのだが、その国家戦略的な意義は非常に大きいので、概略を紹介したいと思う。
ご承知のごとく老健法の制定(1982 年)に端を発した在宅医療の推進は、医療法の改定(1992 年)を持って国家戦略の大きな柱として位置づけられ、それに沿った様々な法制度の整備(その代表が 2000 年の介 護保険法の制定)が今に至るまでなされてきた。在宅療養支援診療所制度の新設、機能強化型在宅療養支援 診療所への発展、整備などはこの流れの中に位置づけられる。もちろんその他、介護用ベッド、入浴サービ ス、高カロリー輸液の薬剤調達、在宅酸素用の機器、医療用麻薬の整備など、枚挙にいとまがないほどのさ まざまなサービスの充実がなされており、25 年前から不自由な環境の下で在宅ホスピスケアに取り組んで きた者にとっては、夢のような時代に突入したと言っても過言ではない。
ただし在宅医療の環境がすべて整ったかというと、決してそうではない。特に、在宅ケア推進の上で要となる医師や看護師の働きに関する法的規制(いわゆる医師法、保助看法など)は昔のままであり、現実にそぐわない不自由な法律規制の中で、医療者は忍耐強く在宅医療を提供している、というのが現状だ。これは 医療者が我慢すればよい、という問題ではない。患者や家族が大きな不利益を被るという、あってはならない事態が現実に起きているからである。
医師法、保助看法は、“医療行為は医療機関で行わなければならない“という前提に成り立っており、医療 法改定(1992 年)当初より、時代にそぐわないという指摘があり、検討課題として俎上に載っていた。ただしその解決法は法律の改定というよりも、運用上の問題として対応してきた。坂口厚生大臣(当時)の時に組織された「新たな看護のあり方に関する検討会(通称“あら看”、2002 年 5 月第一回会議)」は、まさ にこの流れに沿うものであった。あら看は医政局看護科の主導であり、その中心課題は“看護師の裁量権の拡大”であった。
私はこの会議に一委員として参加したがあら看終了後、医政局看護科より医療技術評価総合研究事業の一 環として「在宅療養者の看取りにおける訪問看護師と医師との連携に関する研究班」を組織してほしいとの 依頼があり、現行の医師法、保助看法の改定は行わないで、運用面の問題として「看護師の裁量権を拡大するための方便」を検討することになった。この結末に関しては原著などで詳細に報告しているので興味ある方はその文献*にあたっていただきたいが、要は「各医療機関で特定の医行為に関する事前約束指示を作成 し、一定の条件下で医師の診察を省略してその医行為を実施してもよい」ということであった。
今回の山本班でのまとめをひらたく言えば、一定の条件を満たした場合に限って、特定の医行為を看護師の裁量で行うことができる、ということだ。その条件とは、“手順書”を各医療機関で作成し、看護師に一 定いじょうのレベルを持たせることである。これから政治的な判断などで最終的な形に落ち着くと思われるが、言葉こそ違え(たとえば“手順書”を私は”事前約束指示書“という言葉を用いた)、以前川越班まと めた内容が特定医行為の法改正に大きな影響を与えたと考えている。それはともかくとして、我々が関わる がん患者の在宅ホスピスケアでも、各医療機関に手順書を作成することが求められることになるはずである。 蛇足になるが、昨年上梓したテキスト(川越厚:がん患者の在宅ホスピスケア、医学書院、2013)にこの 問題に関する解説、手順書のひな型を詳しく記しているので、興味ある方は参考にしていただきたいと思っている。
*Hirono Ishikawa ,Koh Kawagoe ,Masayo Kashiwagi, Eiji Yano:Nurse-Physician Collaboration in
Pain Management for Terminally Ill Cancer Patients Treated at Home in Japan. 255-261,2007.
川越厚:在宅末期がん患者に対する医療行為
1.医師と看護師の連携と,指示のありかた 訪問看護と介護 13:46-49、2008
2.疼痛緩和に関する事前約束指示 同上 128-131
3.死亡診断に関する事前約束指示 同上 222-226
J.Palliat. Care 23:


THP として大切にしていること

ベテル在宅療養支援センター 地域看護専門看護師 吉田 美由紀

THP として認定していただくにあたり、「私は、地域の人々が、質の高い医療・ケアが受けられるように、 安心と納得を大切にした在宅緩和ケアシステムの構築を目指していきます。また、患者・家族のみならずケアに携わる人々が、人として温かい関係を築きながら共に成長できるようなチームケアの実践に力を注ぎま す。」と宣言した。
在宅での看取りに関わる THP の活動は、患者と家族の納得と満足のある看取りを実現することに力を注ぐことであると考える。そのためには、患者と家族の希望を聞き取り、それを中心にチームメンバーが役割を果たさなければならない。また、関わるチームメンバー間の関係性や情報の流れも良好にしなければならない。チームがタイミングよく問題を解決できるように、それぞれのチームメンバーと良好な関係性を築きつつ、解決策をともに話合う機会を作ることも大きな役割のひとつである。在宅の現場では、医師とのコミュニケーションが問題にあがることも多いが、医師に事実を伝えて、起こっていることの意味を共有し、皆が納得のいく指示をもらえるように医師とも上手にコミュニケーションをとり、お互いに尊重し合える関係 性を作り上げていくことも重要な役割である。患者・家族の希望する関わりがチーム全体の行動化につなが るように、そしてチームメンバーそれぞれがチームの一員として満足した関わりができるように、押したり引いたりしながらチームをマネジメントしていくことは、THP の活動には欠かせない要素であると考えて いる。
質の高いケアは、質の高いチームでなければ提供できない。質の高いチームを支えるために、人と接するプロであることが、THP として求められる事である。これが、私のモットーである。

ニュースレター第144号

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